2024.2.18 - 昼公演/朗読劇「約束のマーガレット」

 2月18日(日)に東京・新宿BLAZEにて、声優たちが一堂に会した“すべての声優ファンに贈る”エンターテイメント・ショー『BEYOND the V』が初開催された。

 本イベントは、声優陣による朗読が行われた昼の部と、声優陣によるスペシャルライブが披露された夜の部の二部構成で行われた。昼の部/朗読劇はTVアニメ『キングダム』第4シリーズオープニング・テーマを歌唱するSui(Vo)&Ren(Key&Arranger)による音楽ユニット・SUIRENの楽曲『see me』からインスパイアを受けオリジナル脚本で朗読劇化、劇中で使用される音楽もすべてSUIRENの楽曲が起用された。続く夜の部/LIVEは計6名の声優陣の歌唱パフォーマンスが展開され、オープニングアクトをSUIRENが務めた。

昼の部のキャストには、アプリゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』に出演する天海由梨奈(彩々木 花役)、TVアニメ『魔都精兵のスレイブ』やアプリゲーム『アイドリッシュセブン』に出演する広瀬裕也(春田 彗人役)、TVアニメ『東京リベンジャーズ』、『ハイキュー‼︎』、『呪術廻戦』等に出演し、音楽ユニットSCREEN modeの勇-YOU-(Vo)としても活躍する声優・林勇(春田 蓮人 役)、集英社×avexによる多次元プロジェクト・Arcanamusicaに出演するROβiN(槻川 輝役)が登場。

 <声(Voice)の演技を超えて(Beyond)、歌い(Vocal)エンターテインメントを届ける>、<視覚(Visual)を超えて歌で心にも感動を届ける>、<演者=声優(Voice actor)がステージを超えて活力(Vitality)を届ける>、<関わった人・参加した人すべてが最後に喜び(Victory)を感じられる>という多くの“V”をコンセプトに掲げ、催された。昼夜あわせておよそ5時間に渡るイベントの昼の部の模様をレポートする。

 昼の部のキャスト陣がモノトーンのシンプルな衣装でステージへ登場すると、静かなピアノの音色が印象的な『月に咲く花』が流れる。場内に緊張感を誘い、物語が幕を開けた。冒頭は27歳の誕生日を目前に、恋人・彗人からのプロポーズを意識した花が、親友の輝に恋人・彗人との惚気話をするエピソードと、彗人の兄・蓮人が花の誕生日プレゼントの買い出しに付き添う幸せそうなシーンから始まる。天海演じる花は、その場にいるだけで雰囲気を華やかにしてしまう天真爛漫な性格を見事に演じ切り、序盤からその存在感を放ち、一気にストーリーへ没入させた。


 しかし、そんな花には親友の輝にしか話していない秘密があった。誕生日に彗人から白いマーガレットを渡された花は、弾けんばかりの笑顔で喜んで見せたが、彼女には残された時間が少ないことが我々に明かされたのだ。楽曲『彗彩』とともに朗読が進むと、その孤独を胸に秘めた花の心情が一層、悲しみを引き立て、切なさも増した。

 そんなこととはつゆ知らず、花と同棲をはじめた彗人。秘密を彗人に打ち明けないと決めた花は、ついその想いを部屋に飾った3輪の花に託す。それも誕生日に彗人が贈ったマーガレットの意味を調べたことがきっかけだった。その日、花が選んだアネモネ、カレンデュラ、ミヤコワスレの花言葉は、<恋の苦しみ>、<別れの悲しみ>、<しばしの別れ>。その花言葉に動揺する彗人。そんな意図しない遠回しな悪戯をした花に、輝が「あなたの声で、あなたの言葉で伝えないと」と、背中を押すシーンも印象的だった。


相変わらず彗人の前では普段どおりに過ごすと決めていた花は、秘密も全て日記へ残すことに決めた。しかし、その後も母が具合が悪いからと彗人に嘘をつき、家を空け入院することが増えていくのだった。そして最期に部屋の花瓶に挿したのは、一輪のミヤコワスレ。「しばしの別れだ!」という花のセリフと共に楽曲『hana』の歌詞と花の命が燃えゆく様が見事に相まって朗読劇の魅力を掻き立てた。

 花が残した日記を読み、次第に花との別れを受け入れる彗人。<ご飯は食べられてるかな?><日記は読んでるかな?>という花が日記に記した言葉に、<食べてるよ><読んでるよ>と胸を詰まらせる広瀬の演技に心を揺さぶられた。心を許せる兄に、口数の少ない彗人があふれるように花との思い出を語り出す。耳に残っては離れることはない花の声。「失ってから初めて気づく」という大切な存在に出会えた彗人を羨ましく思った蓮人も、花の笑顔を思い返し寂しさを誘いクライマックスを盛り立てる。そして楽曲『景白-kesiki-』が朗読を彩る。

 物語もクライマックスへ。終盤では、楽曲『see me』が紡ぐメッセージが濃厚に贈られた。サビの歌詞には、《僕だけを見ていて ねぇ 下手くそな笑顔で良いから 僕だけを見ていて ねぇ 君のための僕でいさせて》とタイトルに冠した《僕だけを見ていて》という印象的なフレーズが繰り返される。劇中で花が、<お花はね、いつもこっちを見てくれている気がするんだ。例えば、ひまわりはずっと太陽を追っかけるじゃん。だから、「私だけを見ていてね」って思って挿してる>と語り、彗人が<それはいい考えだ、僕もそういうことにしておく。「僕だけを見ていてね」>と『see me』が楽曲の中心で伝える言葉に込めた想いを語っている。さらに最後にはそのエピソードを紡ぐように、『see me』のMusic Video序盤に登場するセリフが花と彗人によって刻まれた。彗人と花が互いに<君だけを見ていた>と語り、<きっと、これからも ずっと>と重ねあわせる。間髪入れずに楽曲『see me』が流れると、会場は息を呑むような空気に包まれた。


 声の世界は奥深い。その余韻は、あたかも目の前でひとつのドラマを見届けたかのような感覚がしっかりと残る素晴らしいものだった。

 朗読後は総合MC・ROβiNの進行にてトークが展開された。「音楽から引き出された朗読劇ということで、音楽と朗読のリンク感は他ではない」と称賛した林に続き、公私共に仲が良いという広瀬は「息ピッタリだった」と兄弟を演じた感想を語った。また、天海は持ち前のキャラと花が似てるという周囲のコメントに「家ではひとりだと膝を抱えている」と笑いを誘ったほか、トーク中にインスパイアされたSUIRENの楽曲も明かされたり、4人がそれぞれ演じたキャラクターへの印象など、キャラクターに命を吹き込む声優ならではのトークが展開され、大いに会場は盛り上がり。昼の部は幕を閉じた。


■「BEYOND the V」昼公演/朗読劇「約束のマーガレット」&昼公演トークパート使用

SUIREN楽曲セットリスト

(TEXT BY 後藤千尋、PHOTO BY 石丸敦章、Hair&Make-up by Ayane・相川ニコ)

夜公演の模様はこちら

BEYOND the V OFFICIAL SITE

声優キャストイベント『BEYOND the V』公式サイトです。